こんにちは、バッグブランド Saori Mochizuki デザイナー&中目黒の雑貨屋 Accent Colorオーナーの望月沙織です。
東京外苑前で開催された東京デザインウィークで、日本工業大学の学生が作った木とおがくずのオブジェから火の手があがり、5歳の男の子が亡くなるという痛ましい事故が発生してしまいました。
このニュースに関連して、Akira Ebihara (@otoko_ebihara) さんという方のつぶやきが、(変な言い方になりますが)言い得て妙だな、と思いました。
東京デザインウィークでの火災事故、現代アート系へのバッシング進みそうだな。センスはともかく色々常識とか配慮が足りない連中が、「なぜそれをやってる連中がいないのか」を深く考え直す機会になるといいのだが。お前らが新しいんじゃない、危ないからやらないだけだったんだ
— Akira Ebihara (@otoko_ebihara) 2016年11月6日
【バッグの持ち手は本当に10本必要?!】
わたくしは、バッグデザインの仕事を始めるに際していろんなものを調べていた時に、
「ないにはないなりの理由がある。それをよく考えろ」
という言葉に行き当たりました。
これはオリジナリティを求めすぎるあまり、誰からも必要とされないものを作っても意味がないよ、ということをいさめた言葉です。
例えばバッグを作る時に、
「誰もやってないから新しい!」
といって、持ち手が10本も20本もついているバッグを作ったところで、売れるでしょうか。
確かにどこのブランドもやってない、目新しいものになるかもしれませんが、バッグの持ち手は1組(2本)あれば十分です。それ以上ついていても、何らかの必要性がない限り、使いづらいだけで無意味なんです。
こういうと、そりゃそうだ、って笑うかもしれませんが、案外これはものを作る人が陥りがちな落とし穴です。
そして、そういうことをやってしまう人に限って、持ち手が1組のバッグを「ヒト真似だ!」と切り捨てたりします。
でも、少なくとも人間が使うことを前提にしたものについてのデザインは、すでに長い歴史の中で最適化されたもの(バッグの持ち手は2本、とか)を取り込むことは、ユーザーの視点に立って考えたらとても重要なことで、その当たり前の枠を持ってして、いかに新鮮な気持ちを与えられるものを作れるか、ということが重要なんじゃないかと思うのです。
また、10本の持ち手をつけたとしても、それが「そっか、そういうやり方があったのか!」と、世の中の人が思わず膝を打って納得してしまうような機能を与えられるようであるならば、十分やる価値のあるデザインだと思います。そしてそういうのこそが、「新しい価値観を創造する」(「バッグの持ち手は2本だ」と思い込んでいる既定概念を飛び越える)ということなのでしょう。
それはアートでも共通だと思います。
これが難しいからこそ、やってのけた人は称賛されるし、生み出されたものは後世まで語り継がれる逸品として歴史に刻まれるのです。
【目新しいことを考えるのだけが「創造」ではない】
ちなみに今回の出荷の原因は、白熱灯を点灯してしまったことのようですが、「最近の若い世代の人たちはLEDしか使ったことがなくて、白熱灯がいかに熱を持つか、実感がなかったんじゃないか」と言われています。
でもこれって、極端なことを言うと
「織田信長って誰?(私その時代に生きてなかったし〜)」
と言っているのと同じで、その次元で片付けられる話ではないと思います。
少なくとも、自分の作品で使おうとしている素材のことに関しては熟知しておいて欲しいと思いますし、ちょっと落ち着いて、色々考えてみればわかることです。
そうやって自分の中に新しい感覚を生み出していくことこそ、本当の創造力だと思いますし、仮に若い世代が判断できなかったとしても、運営サイド含め、いい大人が大勢関わっていたのだろうから、どこかで止めに入るタイミングはいくらでもあっただろうに、、、と思います。
参考までにわたくしが過去に出展した展示会や、百貨店催事に関して言うと、結構うるさいくらいのレベルで消防法絡みの注意は受けます。
テーブルクロス1つとってみても、ある一定サイズ以上のものになると、消防法に則った加工がなされたものじゃないと使用できない仕組みになってます。
その枠の中で実際に自分が展示プラン等を考えていた時は、
「いちいちうるさいぞ。そのせいで面白いことがちっともできないじゃないか!」
と思ってしまっていました。
でも、今回の事件は、そこで面白さの方を優先してしまったがための悲劇だと思うので、もしあの時わたくしの頭の上に何のルールもなかったとしたら、この火災は他人事ではなかったかもしれない、、、とちょっと怖くなりました。
ないにはないなりに意味があるし、
あるにはあるなりの意味がある。
そのどちらの存在もないがしろにせず、真正面から向き合った上で、それを突破したいのなら突破口を考えてこそのいいデザイン・いいアート、なんだと思います。
どんなに悔やんでも、亡くなった命は戻ってこないのが本当に悲しいことです。
わたくしもまた、気を引き締めてデザインと向き合っていきたいと思いました。
亡くなった方のご冥福をお祈りいたします。
バッグブランド「Saori Mochizuki」デザイナー
中目黒の雑貨屋「Accent Color」オーナー 望月沙織
Instagramも更新中
https://www.instagram.com/saorimochizuki/
中目黒の雑貨店(Accent Color)は完全予約制の営業を終了して、2016年8月より毎週金&土の11−17時で通常営業しております。ご予約のないお客さまもご来店いただけますのでお気軽にブラリと遊びにいらしていただけたら嬉しいです。よろしくお願いいたします。 ******* ☆Saori Mochizukiの商品は以下のサイトでも購入できます☆ *Saori Mochizuki Web Shop
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