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「てんてんしましまを探して」第17回・水玉研究所 レポート 「水玉」という名前の由来を探るvol.3「水玉とガラスの深い関係」

「てんてんしましまを探して」

「てんてんしましまを探して」は、毎週木曜正午更新
てんてん(水玉)しましま(ボーダー&ストライプ)のかわいいアイテム、そこに携わる人々の思いをバッグブランドSaori Mochizukiのデザイナー・望月沙織がつづります。企画詳細についてはこちらをご覧ください。

「てんてんしましまを探して」第17回・水玉研究所 レポート
「水玉」という名前の由来を探るvol.3「水玉とガラスの深い関係」

こんにちは、水玉研究家の望月です。水玉のことについてあれこれ探ることを使命にしている水玉研究所ですが、今週は調査が遅々として進みませんでした。

心はもはや東北、仙台で伊達政宗の陣羽織について調べたり、白河で阿部家の陣羽織を調べたりしたい所なのですが、日々の業務に追われて、ちょっと足を運ぶタイミングを見出せませんでした。

ただ日々の業務の中にもヒントはありました。

今、生地の撥水加工を加工屋さんとあれこれ試している最中なんですが、その時撥水がきく・きかない、ということを表現するために、「水が玉になる」という言葉を使うんです。

望月「今回は●×加工でサンプルをお願いしたいんですが、この生地に撥水加工は乗りますかね??」

加工屋「大丈夫だと思いますよー。先日もうちで試したら、水がちゃんとコロコロと玉になりましたからー」

最初はわたくしも無意識にやり取りをしていたのですが、途中ではっと気がつきました。

ちなみに「水が玉になる」というのは、撥水加工がちゃんときいている、という意味で使われます。

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これは、撥水加工を施したうちのオリジナルプリントの試験反なんですが、表面の水が玉状になっているのがお分かりいただけますでしょうか??

これは撥水加工によって水がはじかれていることによって起こる現象です。もしも撥水加工がきいていないと、水は玉状にはならず、じわじわと生地にしみ込んでいってしまいます。

また、水がどれくらい球体に近い形で生地の上に乗るか、で、撥水加工の技術力はかったりもするそうです(つまり、水滴の形がまんまるであればあるほど撥水力が優秀ということになります)。

ということは、水玉という言葉が生まれた背景には、この、「水が何かの上ではじかれて丸くなった状態」が日常的にあった、ということになります。

現代は、車のフロントガラスや、それこそスマホの画面上など、水がコロコロと玉になって駆け抜けていくシーンを沢山目にする機会がありますが、当時はどうだったのでしょうか。

ちなみにそれで言うと、今、我が研究所が目をつけている安土桃山時代の少し前に、フランシスコ・ザビエル(1506-1552)が日本にガラス製品を持ち込んだと言われています。その前からガラスは日本でも作られていたそうですが、本格的に製品として普及したのはその頃と言われているので、もしかしたらそのガラス製品の普及も、「水玉」という言葉の誕生に絡んでいるのかもしれません。

という訳で、引続き、安土桃山時代並びに南蛮貿易について、突っ込んでいきたいと思ってます。レポートの続きをお楽しみに!

バッグデザイナー&水玉研究家・望月沙織/Saori Mochizuki


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「てんてんしましまを探して」第16回・水玉研究所 レポート 「水玉」という名前の由来を探るvol.2「結局 目立つ柄だった」

「てんてんしましまを探して」

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樺色羅紗地水玉文様陣羽織

 こんにちは、水玉研究家の望月です。水玉のことについてあれこれ探ることを使命にしている水玉研究所ですが、前回の調査で「水玉が水玉と呼ばれるようになった時代を特定する鍵は、安土桃山~江戸時代にあり」という仮説を立てたので、まずは安土桃山時代をひも解いていきたいと思います。
日本の水玉について色々調べてみると、どんなルートからせめても、この時代の陣羽織に行き着きます。

陣羽織は戦国時代に生まれたものだそうで、戦場で武士が鎧の上にコートのように着たものです。・・・ということは、戦国時代よりも前の合戦では、武士は陣羽織は着てなかったの??と、とても気になり、代々の合戦図をたどってみたくなったのですが、それは少々水玉研究所の本筋からはそれてしまうので、しばらく脇に置いておくことにします。

で、閑話休題。

そもそも陣羽織は、武士(特に大将)が戦場で自分の存在をアピールしたり、相手を威嚇するために着ることが主な目的だったので、柄には目立つもの、視認性が良いものが好まれました。

そこから転じて、「陣羽織=派手であるべし」という図式が成立したのか、戦国時代を下って江戸時代に入ってからも、ド派手な陣羽織が作られています。

そのうちの1つが、「樺色羅紗地水玉文様陣羽織」で、これは白河(福島県)藩主、阿部家の藩祖、忠秋(1602~75)が、1633年に行われた徳川家光のとあるイベント(「馬揃え」という、優秀な馬を集めて品評会をする行事だったそうです)の際に着用したものと言い伝えられています。

樺色羅紗地水玉文様陣羽織

 

 

 

 

 

 

 

 

「樺色羅紗地水玉文様陣羽織」白川集古苑 蔵

これはわたくしもびっくりのデザイン。相当人目をひいたことと思います。

このように、水玉は目立つにはうってつけの柄でした。地色と玉の色をはっきりと変えればコントラストを際立たせることができますし、リズミカルに同じパターンを並べれば、柄が目に残りやすく、注意を引きやすくもなります。もちろん、玉のサイズを大きくすればそれだけでも目立ちます。

その辺りが戦国武将には好まれたということでしょうか。

そして水玉は、安土桃山時代の南蛮貿易を通して日本に伝来したという説があります。おそらくそれ以前にも水玉に近い模様はあったと思うのですが、先日も説明した通り、古来日本では丸のことを「星(曜)」と呼んでいた風習があり、その存在をいわゆる「水玉柄」として認識していなかったと思われます。

とはいえ、それがどういう形で海外から伝わってきたのか、というかそもそも本当に海外から伝わってきた結果、「水玉」となったのか、またもし伝わってきたものだとして、どうして「水玉」と呼ばれるに至ったのか、そこはまだはっきりしません。

伊達政宗しかり、阿部家しかり、どうやら東北の方がきな臭いので、まずはそちらへ脚を運んで見たいと思っておりますが、さて時間をひねり出せるでしょうか(いやひねり出すべきなんですがー!)。

という訳で引続き調査を進めたいと思います。レポートの続きをお楽しみにー!

 

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「てんてんしましまを探して」第15回・「水玉研究所」レポート【「水玉」という名前の由来を探るvol.1「鍵を握るのは九曜紋?!」】

「てんてんしましまを探して」

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水玉バッグ 水玉バック 水玉模様の研究


「てんてんしましまを探して」第15回・「水玉研究所」レポート
【「水玉」という名前の由来を探るvol.1「鍵を握るのは九曜紋?!」】


こんにちは、Saori Mochizukiデザイナー/水玉研究家の望月です。水玉のことについてあれこれ探ることを使命にしている水玉研究所ですが、まずは何と言っても「水玉はなんで水玉って呼ばれているの?いつからそう呼ばれているの?」というところから攻めていきたいと思います。

ところで話は変わりますが、みなさん、ご自身のお家の家紋は何か、ご存知ですか??有名なものでは徳川家の葵の御紋がありますが、我が望月家の家紋は、「九曜(くよう)の紋」になります。

九曜紋 星 水玉



・・・お気づきでしょうか?

これ、見事なまでに「水玉」ですよね。

わたくしは最近になってこの事実に気がつきました。いや、もちろん我が家の家紋が九曜だってことはもうずいぶん前から知っていましたが、「あれ?よく見たらこれ、水玉じゃん」って思ったのはほんの数ヶ月前のことでした。

なんですが、実はこれ、正確に言うと水玉ではありません。



モチヅキ私物の色無地着物についている九曜の縫い取り紋

 

九曜とは古くはインドの天文学にまでさかのぼる考え方の1つで、丸(曜)は星(天体)を表しています。そして中央の星をぐるりと8つの星が囲む様子は完成された状態を表しており、「満月」を意味する名前=望月家に家紋として用いられるケースが多かったようです。

そしてこの九曜をアレンジして作ったと言われているのが、伊達政宗の「水玉文様陣羽織」です。

 

水玉文様陣羽織 研究
「水玉文様陣羽織」仙台市立博物館のHPより

 

伊達家は伝統のある家柄のため、結構沢山の家紋を使用していたそうなんですが、そのうちの1つが九曜と、この羽織の中央に刺繍されている竹雀紋でした。

また、今でこそ「水玉文様」と呼ばれているこの羽織ですが、収蔵されている仙台市博物館の説明によりますと、伊達家の宝物目録には「紫地羅背板五色乱星」と記されているそうです。つまり羽織にちりばめられている五色の丸は、デザインされた当時は、水玉ではなく星(曜)と呼ばれていたことになります。

となると、「『水玉』という言葉は、伊達政宗の時代よりも後から(江戸時代に入ってから)出てきた可能性が高い」という1つの仮説が立てられます。

逆に言うと、それ以前は水玉模様みたいなものは、「星」もしくは「曜」という名前で呼ぶことが一般的だったのかもしれません。

鍵は、安土桃山~江戸時代にあり。

という訳で引続き調査を進めたいと思います。レポートの続きをお楽しみにー!


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「てんてんしましまを探して」第14回・映画「イヴ・サンローラン」

Saori Mochizukiの映画情報 / 「てんてんしましまを探して」

「てんてんしましまを探して」は、バッグブランドSaori Mochizukiのデザイナー・望月沙織が興味を持ったヒト・モノ・コトについて、毎週木曜正午に更新していきます。企画詳細についてはこちらをご覧ください。

 

こんにちは、水玉とストライプ&ボーダーのバッグデザイナー・望月沙織です。

 

本日の「てんてんしましまを探して」は、日本公開から間もなく1ヶ月を迎えるイヴ・サンローランの伝記的映画について、です。もう既にご覧になった方も沢山いらっしゃると思いますが、わたくしは観ていて色んなことに心がざわざわしてしまったので、筆をとらせていただきました。

 

歴史的なデザイナーに嫉妬するなんて馬鹿げているとは思いますが、イヴ・サンローランと自分の間に横たわる大きくて深い溝に、今日は触れてみたいと思います。

 

イヴ・サンローラン

下のモノクロ写真にうつっているのがイヴ・サンローラン本人。上のカラーがピエール・ニネ演じるイヴ。長年のパートナー・ピエール・ベルジェも「そっくりすぎて混乱した」と評するほどの激似ぶりでびっくりしました。

 

「イヴ・サンローラン」
あなたは目撃する。
永遠のエレガンス誕生の瞬間を。

 

ブランドを運営して行くために、重要なことってなんでしょうか。

 

デザインを考える能力?
縫製技術?

 

それらは確かに重要ですが、わたくしはそれを遺憾なく発揮するためにはやはりお金が必要ですし、支えれくれるチームも重要だと思っています。

 

クリスチャン・ディオールに才能を見出され、彼の急死後、21歳という若さでブランドを任されたイヴ・サンローランは、フランス陸軍への入隊を余儀なくされ、そこで精神に破綻をきたし、軍の精神病院に入院させられます。

 

それがきっかけとなり、彼はディオール社から放り出されてしまうのですが、その時に彼の思いを支えて経済的基盤作りに奔走したのが、パートナーのピエール・ベルジェやディオールのミューズだったモデルのヴィクトワールでした。

 

才能に溢れていて静かな情熱を心に秘めているけれど、少年のように繊細でとても危うい雰囲気を醸し出すイヴは(というか実際に当時はとても若かったですし)、おそらく誰もが思わず手を差し伸べたくなる存在だったのではないでしょうか。

 

わたくしは、そもそもが甘え下手ということもありますが、どこか自分のことを過信していて、なかなか物事を自分の手から離すことができません。

 

1人で行き詰まっている、誰かに手伝ってほしいと言いつつも、心のどこかで「自分のやり方が1番!」と思っているふしがあり、他人に手を出されるとついつい「自分ならもっとうまくやるのに」と感じてしまいます。

 

そしておそらくその雰囲気は、わたくしの周りに見えない壁となって立ちはだかり、無意識のうちに人の手をはねつけていた部分があったのではないかと思います。

 

最近になってようやくそんな自分に気がついたわたくしの目には、イヴのまとう「ほっとけない」感は大変うらやましくうつりました。

 

それはもちろん、確固たる才能があってこその話だと思いますが、才能に満ちあふれている人でも、誰からも手伝ってもらえない人もいます。その理由は様々だと思いますが、わたくしはどうせだったら思いを共有できる人の意見には素直に耳を傾けたいですし、そういう人から、「あの人と一緒に仕事をしてみたい!」と思ってもらいたいと思っています。

 

さてそうするために、わたくしはまず「自分が1番できる」という思い込みから解放されないといけないと思うのですが、40年近くそういう思考回路で生きてきてしまったので、まー、なかなか大変です。

 

自分が1番できると思ってるだけで、実は1番できてる訳じゃないっていうのもタチが悪い。

 

どうにかして、そんな自分から脱出をはかりたいと思っています。

 

ちなみに、映画全体としては、スッキリきれいで過不足なくイヴの人生を網羅したという印象で、わたくしには少々もの足りませんでした。いやいやデザイナーって、もっともっと苦しんでいるでしょ、って思ってしまって。

 

確かに、イヴ・サンローラン財団とピエール・ベルジェの全面協力による数々のファッションショーのシーンは圧巻でしたが、ちらりと垣間見えたイヴと母親との葛藤や、生まれ故郷・アルジェリアとフランスとの板挟みに苦しむ姿、宿敵カール・ラガーフェルドとの人間模様など、彼のデザインの根幹にあるぐちゃぐちゃした闇の部分をもう少しみたかったなと思いました。

 

なお驚くことに、2014年9月末から、本国フランスではイヴに関する映画がもう1本公開されています。

 

「サンローラン」(原題:Saint Lauren)というそのものズバリの題名なんですが、こちらの映画はいわゆる「非公認」。

 

何の断りもなく撮ったことにピエール・ベルジェが激怒した、なんてウワサもきかれておりますが、宣伝用の写真を見る限り、ギャスパー・ウリエル演じるこちらのイヴは、人をおちょくるような表情で笑っていて、ぬらりと妖しく、わたくしがのぞんだドロドロをみせてくれるような期待感に満ち溢れていました。

 

その分、劇中に登場するサンローランのお洋服等は、全て1から自前で作らねばならなかったと思うので、それはそれで大変だったと思いますが、その分ピエール・ベルジェに気を遣うことなく、色んなことを描ききれたのではないでしょうか。

 

こちらの映画は残念ながら日本公開未定とのこと。うーむ。なんとか観るスベはないかな。フランス語は全く分かりませんが、でもフランス語版でもいいので、なんとかして一度絶対に観てみたいと思いました。

 

見比べられた暁には、また感想を書いてみたいと思います。

 

バッグデザイナー・望月沙織/Saori Mochizuki

 

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今日の記事でご紹介した映画の詳細情報はこちら

『イヴ・サンローラン』
角川シネマ有楽町他で全国ロードショー中
監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ
2014年/フランス/カラー/シネマスコープ/106分