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まずは、今ある日常を全うすること【映画「この世界の片隅に」】

Saori Mochizukiの映画情報

この世界の片隅に

 

こんにちは、バッグブランド Saori Mochizuki デザイナーの望月沙織です。

 

話題の映画「この世界の片隅に」を観てきました。

 

なんでもない日常にも、ドラマチックなことは潜んでいる、

 

をモットーにバッグ作りしていたつもりでしたが、知らず知らずのうちに単なるドラマチックを追い求めてしまっていたな、ということに気づかされた映画でした。

 

主人公のすずさんは、あるがままの日常を受け入れ、自分の短所に開き直ることもなく、かといって卑下することもなく、思ったことはきちんと表現しながら生きています。

 

誰だかよくわからない相手にお嫁に出されても、戦争中で、息がつまるような生活を強いられても、何かを恨むこともなく、その与えられた状況に全力でぶつかっていっています。

 

なんでそんなに素直なのか、それは、今みたいにグーグル先生もおらず、簡単に自分とそれ以外の存在を比べることができない時代だったから、今自分が置かれている価値観を疑わないでも生きていられたということなのかもしれません。

 

実際すずさんは、後半、日本が戦争に負け、信じていた世界・生活が崩れ去った時、激しく動揺します。ボーッとしたままの自分で死にたかったと、猛烈にショックを受けるのです。

 

なんとなく、今のわたくしって、そんな状況にあるな、と思いました。

 

いや、すずさんの体験に比べたら、わたくしの置かれている環境は生ぬるくて笑っちゃうほどのものですが、SNSが発達して他人の日常が次々に見れてしまい、さらには海外にもぽんと簡単に行けるようになってしまった今、求めれば求めるだけ高みは存在し、それが時に自分を苦しめることがあります。

 

井の中の蛙が幸せかといったら、それはなんとも言えませんが、でも目の前の井戸の広さを思う存分満喫する前に、大海にばかり思いをはせるのは、それはそれで不幸だな、と思うのです。

 

大海に出て行くにしても、まずは今、自分が与えられた環境を、すずさんが必死に生きたように、生きてみること。

 

その上で、大海に踏み出してもいいんじゃないの?!ということに気づかされました。

 

幸いわたくしは、すずさんと違って、今置かれている環境とは違う世界がある、ということを自覚しながら井の中にいることができます。

 

外の世界に侵食されそうになる自分を保っていくのはなかなか簡単なことではありませんが、まずは与えられた人生をとことん全うしてみよう。

 

この映画を観て、そう思いました。

 

まだまだ中目黒でやり散らかしてることは山のようにあります。

 

落ち着いて、日常と向き合いたいと思います。


バッグブランド「Saori Mochizuki」

デザイナー/望月沙織

 

Instagramも更新中
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これは行かねば!/「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」

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ミシェルゴンドリー

こんにちは、水玉とストライプ・ボーダーのバッグブランドSaori Mochizukiのデザイナー望月沙織です。

 

先日清澄白河駅を通りかかった時のこと、こんなポスターを見つけました!

 

「ミシェル・ゴンドリーの世界一周」

 

わたくし、ミシェル・ゴンドリーが大好きです。初めてミシェル・ゴンドリーの映像を見たのは、大学生の頃、何かの映像イベントの時で、その時に観たチボマットのミュージックビデオの印象が強烈で、頭からこびりついて離れませんでした。

 

その後、そのMVが収録されたDIRECTORS LABEL ミシェル・ゴンドリー BEST SELECTION [DVD]が発売されまして、当然のことながらわたくしは買いまして、色んな人にも薦めまくりました。

 

なのでわたくしの中ではミシェル・ゴンドリーは映画監督というよりも、ミュージックビデオの人という印象が強いのですが、そんな彼の頭の中を体験できるイベント等もあるみたいなので、ちょっと時間を作ってみに行きたいと思っております。

 

荻上直子さんもイベントにいらっしゃるみたいですよー!皆さんもご都合つきましたら、是非。めくるめく世界にはまってしまうと思います。

 

バッグデザイナー

望月沙織/Saori Mochizuki

脱・まわりくどさ/ジャン=ピエール・レオーについて

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大人は判ってくれない

こんにちは、水玉とストライプ&ボーダーのバッグブランドSaori Mochizukiのデザイナー望月沙織です。

 

行ってきました、ジャン=ピエール・レオーに会いに!(トリュフォー没後30周年映画祭の初日に舞台挨拶がありました

 

久々に観た「大人は判ってくれない」もよかった。結局大人って、「大人」じゃないんだよね。遊びたいし、ラクしたい。そんな自分の都合やわがままに子供を押し込めようとするけれど、子供がおとなしく付き合ってくれないと、「あの子はダメな子だ」って言う。

 

大人は判ってくれないというか、判ってないんです。

 

舞台挨拶をしたジャン=ピエール・レオーもすごかった。

 

「昔から何度も観ててすごく良い映画だと思ってて…」

 

と社交辞令を交える質問者を

 

「手短かに話してよ」

 

と、ばっさり。

 

2つ目の質問にも絶妙なコタエを残した後に、「メルシー(もういいでしょ)」と席を立ち、動揺する司会者の静止を振り切るように会場を後にしました。

 

それに対して、

 

“あのかわいかった「アントワーヌ」が偏屈なおっさんになっちゃった”

 

と言ってる人もいたけれど、じゃああれ以上の何が、あの場でできたというんだ、とわたくしは思いました。

 

彼の映画、彼の人生、トリュフォーとのこと、等々、もう世界中で散々語り尽くされていますし、質問だって何度となくされてきているはずです。

 

仮にあの場で1時間質疑応答を繰り返したところで、彼が聞かれたことの無い質問なんて、1コも出てこないと思う。

 

そう思うと、彼が今このタイミングでわざわざ人前で語ろうと思ってくれたこと自体が奇跡だと思いますし、初来日だったということの意味も理解できた気がしました(まだ一度も日本に来たことが無かったという事実に、最初わたくしは一抹の寂しさを感じていましたが、でも、まだ1度も行ったことのない場所だったからこそ、行く意味を見いだしてくれたのかな、と思いました)。

 

と同時に、本質に対して一直線に向かうことの大切さを改めて噛み締めました。

 

「ボクが今、ここに来ただけで意味があるでしょ。これ以上何度となく聞かれた質問にこたえたって誰も面白くないと思うよ」

 

ということを、はっきりと行動にあらわして許されるのは、彼のキャリアをもってしてのことだとは思いますし(これを若手女優が「別に」って言ってやると、総バッシングの目に遭う…)、時に与太話も必要だとは思うのですが、それによって本質がぼやけてしまったり、本音が言えなくなってしまうのは、ちょっと違う気がします。

 

そして仕事が出来る人ほど、ズバリと切り込んできますが、そんな時、わたくしは思わず動じてしまうことがまだ多々あるので、そういう時でも自分が思っていることを反射的にきちんと返せるような核を自分の中に持ちたいと思いました。

 

ちなみにわたくしがジャン=ピエール・レオーの出演作で一番好きなのは、「コントラクト・キラー」

 

これ、トリュフォー映画じゃなくて恐縮なんですが、おっさんジャン=ピエール・レオーのとぼけた味がすみずみまで溢れていて、哀愁漂うとっても良いお話です。機会があったら是非ご覧になってみてください。

 

バッグデザイナー

望月沙織/Saori Mochizuki

「てんてんしましまを探して」第14回・映画「イヴ・サンローラン」

Saori Mochizukiの映画情報 / 「てんてんしましまを探して」

「てんてんしましまを探して」は、バッグブランドSaori Mochizukiのデザイナー・望月沙織が興味を持ったヒト・モノ・コトについて、毎週木曜正午に更新していきます。企画詳細についてはこちらをご覧ください。

 

こんにちは、水玉とストライプ&ボーダーのバッグデザイナー・望月沙織です。

 

本日の「てんてんしましまを探して」は、日本公開から間もなく1ヶ月を迎えるイヴ・サンローランの伝記的映画について、です。もう既にご覧になった方も沢山いらっしゃると思いますが、わたくしは観ていて色んなことに心がざわざわしてしまったので、筆をとらせていただきました。

 

歴史的なデザイナーに嫉妬するなんて馬鹿げているとは思いますが、イヴ・サンローランと自分の間に横たわる大きくて深い溝に、今日は触れてみたいと思います。

 

イヴ・サンローラン

下のモノクロ写真にうつっているのがイヴ・サンローラン本人。上のカラーがピエール・ニネ演じるイヴ。長年のパートナー・ピエール・ベルジェも「そっくりすぎて混乱した」と評するほどの激似ぶりでびっくりしました。

 

「イヴ・サンローラン」
あなたは目撃する。
永遠のエレガンス誕生の瞬間を。

 

ブランドを運営して行くために、重要なことってなんでしょうか。

 

デザインを考える能力?
縫製技術?

 

それらは確かに重要ですが、わたくしはそれを遺憾なく発揮するためにはやはりお金が必要ですし、支えれくれるチームも重要だと思っています。

 

クリスチャン・ディオールに才能を見出され、彼の急死後、21歳という若さでブランドを任されたイヴ・サンローランは、フランス陸軍への入隊を余儀なくされ、そこで精神に破綻をきたし、軍の精神病院に入院させられます。

 

それがきっかけとなり、彼はディオール社から放り出されてしまうのですが、その時に彼の思いを支えて経済的基盤作りに奔走したのが、パートナーのピエール・ベルジェやディオールのミューズだったモデルのヴィクトワールでした。

 

才能に溢れていて静かな情熱を心に秘めているけれど、少年のように繊細でとても危うい雰囲気を醸し出すイヴは(というか実際に当時はとても若かったですし)、おそらく誰もが思わず手を差し伸べたくなる存在だったのではないでしょうか。

 

わたくしは、そもそもが甘え下手ということもありますが、どこか自分のことを過信していて、なかなか物事を自分の手から離すことができません。

 

1人で行き詰まっている、誰かに手伝ってほしいと言いつつも、心のどこかで「自分のやり方が1番!」と思っているふしがあり、他人に手を出されるとついつい「自分ならもっとうまくやるのに」と感じてしまいます。

 

そしておそらくその雰囲気は、わたくしの周りに見えない壁となって立ちはだかり、無意識のうちに人の手をはねつけていた部分があったのではないかと思います。

 

最近になってようやくそんな自分に気がついたわたくしの目には、イヴのまとう「ほっとけない」感は大変うらやましくうつりました。

 

それはもちろん、確固たる才能があってこその話だと思いますが、才能に満ちあふれている人でも、誰からも手伝ってもらえない人もいます。その理由は様々だと思いますが、わたくしはどうせだったら思いを共有できる人の意見には素直に耳を傾けたいですし、そういう人から、「あの人と一緒に仕事をしてみたい!」と思ってもらいたいと思っています。

 

さてそうするために、わたくしはまず「自分が1番できる」という思い込みから解放されないといけないと思うのですが、40年近くそういう思考回路で生きてきてしまったので、まー、なかなか大変です。

 

自分が1番できると思ってるだけで、実は1番できてる訳じゃないっていうのもタチが悪い。

 

どうにかして、そんな自分から脱出をはかりたいと思っています。

 

ちなみに、映画全体としては、スッキリきれいで過不足なくイヴの人生を網羅したという印象で、わたくしには少々もの足りませんでした。いやいやデザイナーって、もっともっと苦しんでいるでしょ、って思ってしまって。

 

確かに、イヴ・サンローラン財団とピエール・ベルジェの全面協力による数々のファッションショーのシーンは圧巻でしたが、ちらりと垣間見えたイヴと母親との葛藤や、生まれ故郷・アルジェリアとフランスとの板挟みに苦しむ姿、宿敵カール・ラガーフェルドとの人間模様など、彼のデザインの根幹にあるぐちゃぐちゃした闇の部分をもう少しみたかったなと思いました。

 

なお驚くことに、2014年9月末から、本国フランスではイヴに関する映画がもう1本公開されています。

 

「サンローラン」(原題:Saint Lauren)というそのものズバリの題名なんですが、こちらの映画はいわゆる「非公認」。

 

何の断りもなく撮ったことにピエール・ベルジェが激怒した、なんてウワサもきかれておりますが、宣伝用の写真を見る限り、ギャスパー・ウリエル演じるこちらのイヴは、人をおちょくるような表情で笑っていて、ぬらりと妖しく、わたくしがのぞんだドロドロをみせてくれるような期待感に満ち溢れていました。

 

その分、劇中に登場するサンローランのお洋服等は、全て1から自前で作らねばならなかったと思うので、それはそれで大変だったと思いますが、その分ピエール・ベルジェに気を遣うことなく、色んなことを描ききれたのではないでしょうか。

 

こちらの映画は残念ながら日本公開未定とのこと。うーむ。なんとか観るスベはないかな。フランス語は全く分かりませんが、でもフランス語版でもいいので、なんとかして一度絶対に観てみたいと思いました。

 

見比べられた暁には、また感想を書いてみたいと思います。

 

バッグデザイナー・望月沙織/Saori Mochizuki

 

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今日の記事でご紹介した映画の詳細情報はこちら

『イヴ・サンローラン』
角川シネマ有楽町他で全国ロードショー中
監督:ジャリル・レスペール
出演:ピエール・ニネ、ギョーム・ガリエンヌ
2014年/フランス/カラー/シネマスコープ/106分

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