「てんてんしましまを探して」は、毎週木曜正午更新。
てんてん(水玉)しましま(ボーダー&ストライプ)のかわいいアイテム、そこに携わる人々の思いをバッグブランドSaori Mochizukiのデザイナー・望月沙織がつづります。企画詳細についてはこちらをご覧ください。
「てんてんしましまを探して」第26回・2014年12月髙島屋大阪店 Saori Mochizuki 期間限定ショップ サイドストーリー vol.5「仕事はツラいよ」仕事って教えられるのか、の巻
前回までのストーリーはこちら:
【第1回】【第2回】【第3回】【第4回】【第5回】
さて、イベント開始前から約1ヶ月にわたってお送りしてきました高島屋大阪店Saori Mochizuki期間限定ショップのサイドストーリーですが、見事、イベント最終日の日程と「てんしま」更新日がぶつかりましたので、本日はイベントの総括含めて、色々振り返ってみたいと思います。
ちなみに今回のイベントでは、半日ずつ数日間だけ、大阪在住・マスコミ志望の学生タナカちゃんに販売接客のお仕事を頼みました。彼女はわたくしの高校時代の同級生で、現在、関西の某新聞社で働く友人Mが講師をつとめる専門学校の学生です。「もともとモチヅキはマスコミ業界出身だから、彼女も色々勉強になるかと思って~」と、紹介してくれました(助かりました。どうもありがとうーー!!)
「もし今、この瞬間に5千円稼いできて、って言われたらどうする??」
初日の勤務後、一緒に晩ごはんを食べに行った時、わたくしは彼女に聞きました。どうやったらうちの仕事をわかってもらえるだろうと思ったのです。
うーーーん、、、と頭を抱え込んでしまった彼女。
今から寒い夜の大阪の街に出て行って、歩いているおじさんに「タクシー代を下さい」って声かけるもよし。手元に持っている筆記用具を5千円で売るもよし。この店内で漫才はじめて木戸銭集めるもよし・・・。
世の中に方法はいくらでもあるけれど、わたくしは、バッグをデザインして、作って、東京から大阪に持ってきて、高島屋さんの店頭に並べて、お客さんに気に入ってもらって、お金を頂く。
これで「5千円」を稼いでいるのです。
そしてこうやって、なんにもない所からお金を生み出せる方法を考えることが「クリエイティブ(創造する、何かを創る)な仕事」と言うんだよ、と偉そうにウンチクをたれてみました。
じゃあそれを踏まえた上で、ということで、彼女には今回のイベントの商品の中で、彼女が一番好きだというアイテム「トント」(ネコのがま口)を売るためのコピーを考えてもらいました。
最初に考えてきたコピーはご覧の通りで、ちょっとつたなさ全開。
ただその時、どうして「レトロ」って思うの??それの何が良いと思うの??と問うと、彼女は次のように応えました。
「このコインケースを見て、頭に浮かんだ情景は、おうちのコタツの上に置いてあって、それを家族みんなが共有している。ちょっと買い物に行く時に、それをみんながパッとつかんで出て行くイメージだったんです。世代を越えて使えるっていうのも「レトロ」だと思いました」
それを聞いて、わたくしはちょっと嬉しくなりました。
正直言ってわたくしは、この「トント」を、そんなイメージで作っておりません。
どちらかと言えば、バリバリ働く女性のバッグの中から、こんなアイテムがぽろっと出てきたら、ギャップがあってかわいいよね、みたいな雰囲気で作っています。
でもかといって、そのイメージだけをお客様に押し付けたいとも思っていません。
なぜならば、ブランドは、イメージを「提案」しても、「強要」してはいけないと思うからです。
例えば、「軽いバッグを持つと、仕事も楽々できますよ~」という提案はしても、「仕事をする時は軽いバッグじゃなきゃダメなんです」って言い切ってはダメだと思ってます。
親からあれこれしろって言われるとやる気が失せるのと一緒で、ほんのちょっとでもいいから、お客さんが自分で好きに使えるような「余白」を残してあげないと、持ってて楽しい、って感情が湧かないんです。
でもブランドを立ち上げたばかりの頃のわたくしは、そのさじ加減がわかっていませんでした。「わたくしがかわいいって言ってるんだから全員持て!!」と、妙な迫力でお客さんに迫っていました。
そこからしばらくして、最近はようやく「余白」のことを考える余裕が自分にも生まれ、なるべくその部分を意識して作る&売るようになり始めたところだったので、今回彼女が「トント」に余白を見いだし、自分なりの色で埋めてくれた様子を見て、わたくしはなんだか報われた気がしたのです。
という訳で、「トント」の今回のイベントでのコピーが決まりました。いくつかタナカが送ってきた中から、わたくしがベストだと思ったものはこれです。
「家族のような暖かさ」
「家族」はあったかいものだ、と表現するタナカ。きっと暖かく、大切に育ててもらったのではないでしょうか。彼女の人柄もにじみ出ていると思います。芯でぷっくりと膨らんだ「トント」のフォルムも、手のひらにのせるとあったかくて、きっと身近な誰かに贈りたくなると思います。
このコピーで本当に「トント」が売れるのか?!を検証する時間は、今から今日の閉店まで、あと約8時間しか残っていないのが残念ですが(そしてそもそも「トント」の在庫が残りわずかなんですが、、、)関西にお住まいのみなさま、そして家族へのクリスマスプレゼントがまだの方は、ぜひ難波の高島屋大阪店1F中央イベントスペースに遊びに来てください。
20時半まで、てんてんしましまと一緒に、待ってます!
【 完 】